Jane Jacobs,1961″The Death and Life of Greate American Cities,『アメリカ大都市の死と生』山形浩生訳(鹿島出版会)。この本を読む資格を手にしているような気がする。読めなかったものが読めるようになっている。島根県吉賀町に引っ越してくる直前に買ったはずの本。帯の惹句にはこうある。「近代都市計画への強烈な批判、都市の多様性の魅力、都市とは明らかに複雑に結びついている有機体」。ジェイン・ジェイコブズ(以下JJ)を紹介する際に、この中の前ふたつでもってなされることが多い。わかりやすいしね。「都市計画への批判」「都市の多様性の魅力」この2つだけをとれば、JJを読まなくても、なにがしかの紹介文や解説を読んで、それらしくわかったようにはなれる。私の理解だって、それらとさほど変わりはしなかっただろう、これまでは。
読み解くのは、惹句の中の3番目、「複雑に結びついている有機体である」。この言があらわそうとしている『アメリカ大都市の死と生』の可能性をあきらかにしていきたい。それは、有機体、すなわち生命とは何か、どうとらえるべきものなのか、ということでもある。
22章 都市とはどういう種類の問題か から引用しよう。
《生命科学では、特別な要素か量ーたとえば酵素ーを特定し、その複雑な関係と、他の要素や量との相互関連を苦労して学ぶことによって組織だった複雑性を扱っています。……中略……原理的には、これらは都市を理解して助けるのに用いられる方策とほぼ同じです》
JJののちの著作『経済の本質-自然から学ぶ』では経済を生命現象としてとらえようとしている、その萌芽とみることもできよう。だが、この見方は補助線であって、JJが繰り返し主張する帰納的方法とは軌を異にするものだ。
肝要にすえるべきものは、JJが「ここまで本書を読んできた方なら、これらの方策をあまり説明する必要はない」としてあげている「都市の理解で最も重要な思考習慣」、すなわち次の3つである。
《・プロセスを考える
・一般から個別事象へ、ではなく個別事象から一般へと帰納的に考える
・ごく小さな量からくる「非平均的」なヒントを探して、それがもっと大きくてもっと「平均的」数量が機能する方法を明らかにしてくれないか考える》
どういうことだろう。それは、あと100回、このシリーズが続いたらば明らかになるであろうことだ、と思う。
以上。