ヘミツルアズキとアリとカメムシ

数日前のこと。ヘミツルアズキの鞘に群がる黒いものが目に入った。
クロオオアリか。いいぞ、こいつがいるとカメムシが寄ってこないというし、よしよし。
その3日後、すなわち今日。
ん、アリにしては、じっとしてる(しすぎ)。大きさもまちまちすぎる。…これ、吸ってるんじゃないか!豆を!
カメムシじゃないか!なんてこった。
どうやらホソヘリカメムシの幼虫である。成虫がそばにたくさんいた。
アリに擬態するカメムシ。偽アリだった。天敵をあざむくためというが、私だって騙された。本物のクロオオアリもうろついているので、まぎらわしい。
えーいこのっと邪魔者扱いだが、こうなると俄然かわいく見えてくる。にっくきはカメムシ、これだけまとまっていると、この鞘どころか群落全滅かもしれない。
気になって、離れたほかの地点をみてみると、とりつかれてはいない。発生地点はちょうどアワを育てている場所に隣接しているし、隣では晩春まで小麦を育てていた。少しずつカメムシがふえる環境にしていたのかもしれない、私自身が。ある必然の中での発生か。にくむとすれば、手前勝手なヒトの無思慮だろうと、頭を冷やした。
冷静になると思い当たる節はあれこれある。この場所は春先に真砂土を入れたところだ。砂は庭の松周辺。かつて池があったところらしく、松の衰弱(病気)の一因となっているのではと、かねて疑っていた。とくにある一角に植えるものことごとく虫がついて枯れていく。庭師(樹木医)との協議で、まず掘ってみたところ、池の残骸と思しき瓦礫がいくつか出てきたのみで、土質全体は水はけのよい真砂土であった。念のため、点穴を打ってもらったが、それらを施す際に出た真砂土である。
その土が豆にはあったのか、他の条件もあったのか、ハタササゲはおどろくほどよく育ち、たくさんの花と実をつけつづけていたものであった。なにかカメムシ大量とりつきの一因かもしれない。
さて、下の写真がカメムシに吸われてしまった鞘。
10mほど離れた別の場所(庭)にあるものは、カメムシもついているのを見たことがないし、アリさえいない。収量はかなり落ちるが、こういうときに「強い」のだと考える。

ヘミツルアズキ雑想

「これ、おいしいね」と妻が言った。暑い暑い8月のことであった。白米にまぜて炊いた豆、ヘミツルアズキを指して言ったのだが、過去幾度かは食しているものだ。5〜6年ほどにはなるだろうか。玄米おにぎりに雑穀を入れておにぎりにするときもある。ただ、「おいしいね」と口にしたのは初めてのことであった。機会は多かったとはいえ、7月終わりから9月頭にかけて収穫し、食するのは冬から春にかけてということが多い。今回のものがとれたてであったことが要因のひとつかもしれない。そこでいえることがある。収穫のあとすみやかに脱穀し、冷蔵保管しておくことが、美味の秘訣だろうということ。従来、夏の暑いさかりに、暑い場所に放置したままであることが多かったのだ。豆であるから大丈夫とタカをくくりすぎていたのだ。数日もあれば乾燥には十分なのだから、1〜2週間を単位として冷蔵保管へ移行することを次年からの慣例としたい。

ヘミツルアズキでgoogle他のウェブ検索、国会図書館検索をかけてみても、前者で私自身が書いたウェブ記事がヒットするのみ。あらためて出自を記しておこう。東北の焼畑残存地帯で、焼畑の最終年、すなわち耕作放棄へとすすむ年に作つけするという。8年前であろうか、わけていただいた。草の繁殖が強くなるが、このヘミツルアズキはそれらを凌駕するのだという。幾度か試しているが、ふつうにそうはならない。育てているのは山陰地方の300mほどの標高の場所ゆえ、諸条件が異なるのだろうから、最適なところをさぐっている。

アズキと名乗っているが、つる性のハタササゲである。鞘は褐色。花は朝早くに咲いて、昼までには閉じる一日花。日本では九州・沖縄地方はじめ各地で自生種として残っていますが、黒鞘が多いよう。日本での栽培種はあまり聞きませんが、タイ・ミャンマーあたりの焼畑少数民の間ではメジャーな存在で、写真や報告ではよく目にする。

 

下の写真は2017年秋に撮影したもの。

そして、下のものは同じく2017年の9月27日。まだ花が咲いていたのか。春焼地で撒いたものか、どうかが不明。