三成で所用をすませ、馬馳を通って、平田へ戻る道中のこと。うっすらと青い色が雲にすけてみえなくはないが、風は冷たい。なのに、納屋の前で、赤名さんが何かつくっているではないですか。こりゃ懸案のあれとこれを聞いてみなくてはと、軽トラを引き返して声をかけた。
あれです。年取りカブと熊子とアワのこと。
●年取りカブ(正月カブ)
・聞かんなあ(何かひっかかる感じ)
・年取りという言葉は、年に3回だか4回だか使っていた。節分の前の日、旧正月の前の日、大晦日の日か。
・地カブなら、いまでもそこらにあるが、交配が進んでいて、どうだか。根は食べない。春先に茎たちしたものを食べる。苦みがあるが春はそれがいい。
●熊子
・聞かんなあ(まったくわからないニュアンス。年取りカブとは違ってまったくという感じ)
・カブとアワは一緒に汁にして食べた。
・アワもキビもたぶん、種はあるが、発芽しないだろう。最近はつくらんから。
・いやあ、そのへんのことを知っとるばあさんらがいなくなった。一世代前だ。
●そば
・今年つくるかどうかはわからんなあ。
・粉にすると劣化が早い
・うまいつくりかたいわれてもわからん(私たちの「わからない」というレベルよる数段上の「わからない」である。この人のつくる蕎麦より上手いものにはなかなか出会えない。挽き方・打ち方・ゆで方などあれど、「体験」などで素人がうっても旨み・香りが違う。あきらかに蕎麦そのものがいいのだ)