料理の中の文化と野生〜『江戸の料理史』(本の話#0009)

告知案内文を書きました。原田信男『江戸の料理史』をとりあげてお話するトークライブです。

◉内 容

「一日ニ玄米4合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ」と謳った宮沢賢治は、農民の生活を料理を通して芸術にまで高める夢を抱いていました。人が人である限り、食事は腹を満たせば足りるものではありません。

それは、素材を吟味し、求め、ときにつくり、ときに摘み、さばき、蒸す、煮る、炒める、あえる、揚げる…無数のプロセスを内包しています。調味をへて、種々の器に盛り付けられ、卓を囲み共食するという時間をつくります。また、移ろいゆくものと節目とを編み出します。日々の料理、季節の料理、祝いの席で、悲しみの席で、旧交をあたためる席で。また、離乳の食から介護の食、そして最後の食まで、料理は、人の一生とともにあります。同時に歴史とともにある。

2017年、ガストロノミーが世界を席巻するなかで、貧食と飽食が競いあいながら、大地は疲弊し資源は枯渇し地球生命史上最大の絶滅シーンに突入している現代に、私たちは確かに生きていて、日々働き汗を流し、そして料理を楽しみ食べています。

今回とりあげる原田信男『江戸の料理史』は、一見専門性の高い歴史文化の書にみえますが、そうした歴史と文化と人の生活とのダイナミズムをくみ取るには格好の良書です。

いま、私たちが和食として享受しているものの大半は、江戸時代に形づくられたものです。すし、そば、天ぷら、豆腐、味噌、醤油、砂糖はもちろんのこと、玄米ではなく白米が普及するのも江戸中期以降のこと。初鰹をはじめ旬よりも初物をありがたがるのも江戸時代からですし、土用のウナギ(夏のウナギはまずいからどうやって売るかの策として)、美味しさよりも演出に走る料理店など、文化的爛熟と農村での飢饉が同時進行しながら社会が崩壊へと向かい明治維新を迎えるという流れは、なんだか今の世と似たものを感じますねえ。

お話は多くの現代的な話題をもちりばめながら、料理の中にある野生と文化をよみといていこうと思います。

ここでさわりをひとつ、江戸料理本の嚆矢『料理物語』について。

『料理物語』では巻頭に海の魚があげられます。なんでもないようでいて、大きな転換がここにあらわれているのです。それまで魚といえば鯉が横綱的存在でした。江戸時代に至って鯉から鯛へと横綱が交代するのです。それだけではありません。川魚の地位が低下し海の魚が尊ばれるようになるのです。そして川魚から海魚へという転換は、山の肉から海の魚へという変化でもあり、タンパク質摂取と発酵食の転換、塩の利用、それらの技術も担い手もかえていく大転換を引き起こします。そう、江戸時代は、山から平野・海岸へと、経済・文化・価値の移動が起こる時代であり、人口の爆発をともなう新田と都市開発の時代でもありました。ここには寺社の転換もかかわりますし、宗教・道徳・人生観の大転換でもあったと考えられます。夜なべ、勤勉実直が尊ばれるのも江戸時代からです。キリスト教を通して世界に向かって開かれながら閉じていく時代……。

さて、それらはすべて料理へとつながっていきます。お楽しみに〜。

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料理の中の文化と野生〜『江戸の料理史』(本の話#0009)

◉主 催:ナレッジ・ロフト「本とスパイス」&カフェ・オリゼ

◉日 時:10月27日(金)

 開 場…18:30

 トーク…19:00〜20:20(20:30〜22:00 食事とカフェの時間)

◉場 所:カフェオリゼ(木次町里方)

◉参加費:2,500円(スリランカカレー/ドリンクセット含)

◉定 員:12名

◉申 込:「本とスパイス」参加希望として、カフェオリゼ宛facebookメッセージか下記のメールアドレスまでお名前とご連絡先をお知らせください。返信のメールをもって受付終了とさせていただきます。メールはこちらまで anaomoshiro★gmail.com(★⇒@)

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