出雲の山墾り〜2023sec.21

10月30日(日)

■レクチャー

数日前までの天気予報は「晴れ」。まさか降雨はあるまいと見ていたが、前日夜の激しい雷雨から、不安定な大気の状態が続くおそれはあった。朝、軽トラックで家をたったその時からポツポツと雨の雫がフロントガラスに落ち始め、十数分後にはワイパーを動かすようになり、やがて雨具が必要になるほどの本格的な雨模様となった。

この日は大学生のボランティア希望者が1名参加。雨を1時間ばかりしのぐ間、牧場の事務所をお借りして、レクチャーを少々。よく覚えていはいないが、この際、箇条書きにでもしておく。のちに、この日見たものなどを記すのと同様である。

・ダムの見える牧場について…面積、できた経緯、特徴、放牧と教育酪農ファーム
・焼畑…人類学的アプローチ、半栽培(semi-domestication)と生態系保全技術、半栽培という技術の特徴、人口減少下の中山間地、人類にとって野山に火を入れることの普遍性

■山林踏査と草木瞥見

ルートは、春焼地から林地に入り、尾根筋を岩内山へ向かうもの。まずは春焼地にて

†. 白膠木(ヌルデ)…春にはいちばん大きなものでも胸の高さほどであった。火が近く、部分が焦げ枯れてしまった株も命脈を保ち、いまや背の高さ超えて幹も枝もしっかりとしてきた。雌雄異株だが、花は今年は未だ咲いておらずどちらかは不明。民俗学界隈では著名な樹で、地方名は優に百を超すと聞くが、この出雲地方での呼称は未詳。成熟した雌株であれば、この時期からつけた実にリンゴ酸カルシウムが粉をふいたようにつき、なめるとしょっぱい。塩の代わりに使ったとは、椎葉クニ子さんの言。斉藤政美がクニ子さんの語りを収録した『おばあさんの植物図鑑』1995,葦書房.を読むと、「シオデ」とおっしゃっている。この本での見出しは「フシノキ」。フシとは五倍子をそう呼ぶ。五倍子はヌルデにできる虫こぶ。虫はヌルデシロアブラムシで、冬はチョウチンゴケに、春から秋をヌルデに、世代交代をかさねがら寄生する。五倍子の読みとしてのフシは節に由来する(中田祝夫編・新選古語辞典.小学館.S49による)。五倍子をゴバイシと読むのは生薬としての利用を主とした読みである
五倍子は乾燥させて糸の染料に使う。お歯黒にも使われた(鉄を煮た液と五倍子の粉であるフシコとを交互に歯に塗ると黒く染まる。虫歯予防にもなる)。祈祷の護摩木に使うのもヌルデである。
そんなあれこれの説明は今回はなし。微量のウルシオール、すなわちかぶれる成分はあるが、ヤマウルシやハゼと比較すればまったく問題ない程度であるからまず安心して(極度にかぶれやすい体質などはありうるが)触ってよいこと、見分けるのは葉軸に翼があることであるとのみ。ヌルデはできるだけ伐らないように、という意図の伝達にで。

†. 山漆(ヤマウルシ)幼木はキハダに似ていなくもない。葉は互生。キハダは対生。

†. クサギ…保全しよう、なるべく伐らないように―と意識してから3年ほどになるかと思う。増えすぎたかもしれない。今年から群落を形成しているところなどで積極的に伐っていく。まずは大きくなったものを活かし続ける方向で。実を食べる鳥はメジロなど限られるということだが、このあたりにメジロは見かけない。種子を拡散させているのはどの鳥だろうか。
岩井淳治さんが、「月刊杉web版」の連載で、クサギの地方名をあげておられる。

《クサギリ、ヤマギリ、クサッキ、クゼノキ、クサギナ、クサナギ、クサイナ、ツチクサギ、クジュ、クジュウ、クジュナ、コクサギ、トリバ、トヨバ、トゥバイ、トゥバエ、トゥノキ、トンノキ、トゥゴロノキ、トノスギ、トノキ、ツゥノキ、トンノコムシノキ、ムシッコノキ、ミソブタ、ヤマウツギ、キノメ。》

静岡の井川では「トイッパ」と呼ばれていたと記憶する。上記引用の中では、トリバ、トヨバの系統であろう。トリバは「採り葉」、そのバリエーションのひとつがトイッパ。そう作業仮説をたてていたが、どうだろうね、違うかもしらん。また、ツチクサギは面白い。

《『紀南六郡志』という書物によると、柴を刈ったあと、来春にその根から直接出てきた新芽をツチクサギと言って、普通の新芽と違い上等のものとしていたようです。》

やってみようかな。
漢方薬としては、海州常山(かいしゅうじょうざん)。漢語名で臭梧桐(しゅうごとう)。

†. キハダ…大木がかつて1本だけあった。山中に小木を稀にみる。ミカン科らしい香木でもある。林業研修に来ている人で、キハダが山にある樹のなかで一番好きだと言っていたことを思い出す。北海道ではかつて大径木が多く育っていたらしい。そんなことを思い出す。

†. 地這いキュウリ…種をまいたが、発芽しても育たなかった。火入れしてないところからのものが一株だけ生き残った。ふたつ実がなっていたのでとって昼に食べた。まずまずうまし。

†. ブラックチェリー…もう終わりかと思っていたが、まだいけそう。雨の影響もあって裂果がほとんど。20ほどとっただろうか、昼に食した残りは参加者のお土産に。

†. その他…タカキビ、里芋、大豆(そろそろ収穫)、木綿、アマランサス(すぐにでも収穫すべし、やや遅し)

●現在伐開中の隣接地にて――。

†. 山茱萸(サンシュユ)…生では苦味が強い。乾燥させたものが滋養強壮によいと聞く。

†. 冬いちご…食べ頃になってきた。甘い。

†. コシアブラ…まだ葉がついているので見分けやすい。冬の伐開時にできるだけ保全するために見分けをしっかりと。数本、テープをまいてもいいかもしれない。

●林内に入るが、のちに加筆するとして、今日のところは樹種のみあげておく。

†. ヒノキ

†. アベマキ

†. イヌシデ

†. リョウブ

†. フジ

†. コハウチワカエデ

†. クリ

ほか樹種不明のもの数種

†. ムラサキシメジ

 

 

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