令和6年10月18日。晴れのち曇り。最高気温は30℃にまで達したようだ。暑い。東の山の端から、積雲かと見紛うような雲が湧き上がるのを見た。車で葡萄園からオリゼに帰る途次、まだきれいな花をつけている萩をところどころに見つける。ブレーキを踏んで、ものの30秒もあれば、手折ることもできたのだがそうはせず。記憶とともにここに記しおくこととする。長く暑かった夏は、人の畑に不作をもたらし秋の実りをそぎはしたが、野の草木は秋を忘れることなく淡々と、咲くべきときに咲いている。強さ、逞しさ、というものではなく、美しさをこそ、認めたい。端整であることを表す「美」であるより、可憐と形容すべきだろうが、よりふさわしい和語を見つけられず。
さて、この日、目にし、感じたことの断片を散りばめておく。
オリゼの庭と裏の畑と
†. 金木犀の花がいっせいに散りはじめた
一瞬なにかと思うほどに、樹下の足元をオレンジに染めていた。香りはまだかすかに漂う。昨年、樹高をおさえるべく強剪定を施しており、樹勢は変わらずとも弱ってはいると思う。その割には花がつきすぎかとも思う。カボチャを丸い樹冠全体に這わせるようにして強い陽射しを当てないことが、あるいはよい作用をもたらしているのかもしらん。谷間にあるような裏庭の環境にあっては、夏は日照に恵まれた点のような場所だから、カボチャにとっては当然の所行で、金木犀を思ってのことではない。お互いの加減がよいようにみえる。
†. ケールの発芽を確認、九条ネギはまだ
5〜6日前に播種したセルにおいて。冬の間に雪をかぶりながらも成長生存できるだろうか。春に花がつけば種子をとれるだろうか。
†. シュウメイギクの白が昨日開花
オリゼの庭のシュウメイギク。一輪のみだが。明日は雨が降るというのに。
山の畑にて
火入れ後、4回めくらいの草刈りか。これが最後かもしれないくらいの秋の草。急傾斜斜面については来週再来週にできるとよいのだがと思う。
†. セイタカアワダチソウ
鮮やかな黄の色が、まだ枯れるのには間がありそうな鈍い草色の中に目立つようになった。目についたものは、どうであれまず刈り取る。また花をつけるだろうが、勢いをそぐために。ツルアズキの群生が見られた場所で急繁殖をはじめたようだが、遠目からの視認したのみ。後日確かめることとする。
†. 牛の侵入
なぜこんなところに糞が。一頭のみ。小柄なやつだ。のびた草がないでいるところをたどりながら推するに、蕪栽培跡地の急斜面から入ったようだ。クサギを数本切り倒して崖に投げ込むように置いた。数日内に様子をみて、補強する。蕪が無傷だったのがなにより。
†. 焼畑の蕪
前回移植したものは、大きなものは活着(というのだろうが)したようだ。1週間以内には間引かねばならぬ箇所が目についた。日曜には少しばかり抜こう。形状のよいもの、すなわち種をとりたいものについては移植、そうでないものは持ち帰ることとする。
†. 焼畑の大根
前回播種したものの半分ほどが発芽か。
†. 焼畑のコリアンダーとディルとケール
雨が続いたなか、一月遅れくらいでの発芽と成長。どこまで大きくなれるだろうか。
†. タカキビ
小さくともよい種子がついている、ばら撒き地のものを2本刈り取る。タカキビは日照大事。
†. 大豆
一粒種はとれそうだ。種子をつけることすら無理かとみていたので、胸をなでおろしたい。焼畑・山畑大豆の血である。
†. コナラとシラカシ
なんと、シラカシを刈払機で切ってしまった。地面10センチほどから上。下部に葉を残してはいるので、生き残ってください。コナラは背をずいぶんとのばした。170センチくらいか。今年の春、牛にほぼすべて食われたところからの回復である。
†. キバナアキギリ
夏焼地の東斜面脇に花をつけて群生。はじめて見た、はずはないのだが、20mあまりにわたって群生している様ははじめてである。焼畑をしたことの何らかの影響によると思う。きれいだ。北西に面した1〜2mほどの切立ちの下でゆるやかな坂路である。火入れ前に何度か草刈りをしたことで、他の競合植物が劣勢となり、地下茎をもつアキギリの株立がふえたのだろう。
山野の谷間に広くはえる多年草です。秋のキノコ狩りで、よく目にする花のひとつです。山で秋を告げる花です。
《飯南町の植物ガイドブック,H25,飯南町森の案内人会》に記されているが、キノコも今年の秋は多く目にする。まとまった降雨がつづき、土がつねに湿っているからという要因も、キバナアキギリの群生をひろげたと思われる。
シソ科アキギリ属。学名はSalvia nipponica。日本のサルビアである。茶花として琴柱草(コトジソウ)の名としても知られる。《宮本巌,摘み草手帳,S53,山陰中央新報社》に、宮本はこう記す。
キバナアキギリは雪深い中国山地はいうまでもなく、雪の降る海岸山地でも十分見ることができる。仁摩町、大田市の後背を走る邇安山地、あるいは島根半島を縦走する島根山脈がそうである。かつて、約200万年も前、日本海ができたといわれるが、それ以来日本海がもたらす多量の積雪は新しい種の分化をうながし、かつそれに適応する数々の種を生み出した。地史的な要因によって作出される植物は他にもいろいろな要素があるが、こうした日本海の積雪が作り出した要素を特に日本海要素と呼ぶ。キバナアキギリはその日本海要素の一つである。春、残雪の消えやらぬころ、伸びた若芽を摘み、ゆでた後(塩)、ゴマあえ、辛子あえ、または油いためとする。