さくらおろちの花の下

 ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃

 竹薮の暗闇の前に浮かび上がる姿に西行の歌がかぶります。

 そうそう、お役所では「桜の下に首ひとつ」という句があると聞きました。老いた桜(ソメイヨシノ)は切りたくても切れなくて、切ろうとした管理官の首のほうが切られるのだというお話。

 ソメイヨシノは自家不和合性が強い品種であって、ソメイヨシノを両親とする種は稔ることはあっても発芽には至らないという。よって子孫を残せない1代限りの種。ほとんどすべてが接ぎ木、挿し木による繁殖である。ある意味、日本のソメイヨシノはすべてクローン。

 江戸の花見文化から生まれ、戦後またたく間に全国に広まったこの花の栄枯盛衰を思ってみれば、「おごれるものもひさしからず」。

 ソメイヨシノにおごりもなにもないのだろうが、少々行きすぎたもてはやされぶりだなあと思うのだった。

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