筍の下ごしらえ2016

旬はやや過ぎつつあるものの、筍を掘ってやらねばなりません。食わねばなりません。お互いのために。そして、いかにうまく食べるかが、また掘ってこようという意欲につながるのですから、したごしらえは首尾よくやらねばなのです。
地面から青芽が出るか出ないかくらいのものがよいのですが、筍畑から採るわけではございませんので、そうそううまくはいきません。見つけられない人はいつまでたっても見つけられないようであり、これ、成功体験という経験こそが肝心でありまして、わかりにくくいえば、目と脳のパターン認識に「筍がいままさに生え出ようとしている姿」が3次元モデルで刻印されていれば、ぱぱぱっと見つかるものであります。
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さて、そうやって掘り起こした筍ですが、次には、一刻も早くあく抜きにとりかかることです。
料理いただく方からご指導いただいた方法は次のとおり。
1)上部は斜め切り、下部は水平に切り取る。
2)皮はついたまま、米ぬかをといた水で1〜3時間煮る
3)串がすーっと通るくらいになったら火をとめて放置し、さます
4)皮をむき、流水にひたしておく
3時間も煮続けるようなことになれば、ガス代がばかになりません。よって、私どもではロケットストーブ(コンロ)が、ここぞとばかりに大活躍するのです。果樹の剪定枝、切って乾燥させておいた竹を材に、コトコトと畑仕事や庭仕事をしながら。
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奥出雲山村塾で、ロケットストーブの制作教室とセットでやってみたい気もしますが、希望があればということにしておきましょう。
このロケットストーブもかれこれ3年も使っており、そろそろ耐用年数を過ぎようかというところでして、もう1台つくっておくべきであると、壊れてからでは苦労するよと、脳内小姑が突っついておりますし、つくれる時間はあるのですから、ここはエイヤッとやっておきましょうぞ。たぶん5月くらいに。梅雨が来る前にであり、竹取り活動が活発化する前にであり、最低でも8月の前に、ですね。

クマゴ、地カブ、キビ

 三成で所用をすませ、馬馳を通って、平田へ戻る道中のこと。うっすらと青い色が雲にすけてみえなくはないが、風は冷たい。なのに、納屋の前で、赤名さんが何かつくっているではないですか。こりゃ懸案のあれとこれを聞いてみなくてはと、軽トラを引き返して声をかけた。

 あれです。年取りカブと熊子とアワのこと。

●年取りカブ(正月カブ)

・聞かんなあ(何かひっかかる感じ)

・年取りという言葉は、年に3回だか4回だか使っていた。節分の前の日、旧正月の前の日、大晦日の日か。

・地カブなら、いまでもそこらにあるが、交配が進んでいて、どうだか。根は食べない。春先に茎たちしたものを食べる。苦みがあるが春はそれがいい。

●熊子

・聞かんなあ(まったくわからないニュアンス。年取りカブとは違ってまったくという感じ)

・カブとアワは一緒に汁にして食べた。

・アワもキビもたぶん、種はあるが、発芽しないだろう。最近はつくらんから。

・いやあ、そのへんのことを知っとるばあさんらがいなくなった。一世代前だ。

●そば

・今年つくるかどうかはわからんなあ。

・粉にすると劣化が早い

・うまいつくりかたいわれてもわからん(私たちの「わからない」というレベルよる数段上の「わからない」である。この人のつくる蕎麦より上手いものにはなかなか出会えない。挽き方・打ち方・ゆで方などあれど、「体験」などで素人がうっても旨み・香りが違う。あきらかに蕎麦そのものがいいのだ)

みざわの館前の「地カブ」

 雪かきのお手伝いと竹林整備研修の下見のために、奥出雲町の「みざわの館」までのぼってきた。「地カブ」のことを話題にあげたらば、Uさんは即座に「地カブなら、そこにあるがね」と。そう、「年取りカブ」ならぬ「地カブ」ならば、ずいぶんととおりがよいのだ。  「根」よりも春先に茎立ちしたものをよく食した(食す)ものらしい。調理法については、聞き損ねた。
 「くまご」「熊子」のこともきいてみたが、こちらはてんで聞いたこともないようだ。土間に腰掛けてお茶をしていた60〜70代男性3人が3人とも首をかしげておられた。Yさんもご存じなかったのだが、Uさんのお母さんはどうなんだろう。まあ、すぐには出てこないだろうが、丹念に丁寧に少しずつ、暇をみつけては聞き取りを続けていこうと思う。

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 上の写真は、10日ばかり前に撮影した、みざわの館前の「地カブ」の生息?地点。

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 そして、こちらはそこから抜き取った2つのものの写真。根の部分の大きさや形、それに葉の姿形ともに、Yさんのところのものとはちょーっと違うような。どこを見たらよいのかが、まだわからないのだが。さて、それより日曜日の竹林整備研修はいまだ参加者2名。せめてもう2人いるとなにかとやりやすいのだが。はてさて。

蕪コーセンのこうせんは香煎である

 野本寛一氏が、焼畑の蕪料理の中でも「蕪コーセン」はもっとも古いものを残している、と書かれている(「焼畑民俗文化論」)ので、蕪コーセンを調べてみるも、手がかりがなかった。
 しかし、1月19日の平田蕪の取材の折、門地区の吉川氏より、蕪の食し方として、「汁にするのだ。屑米を焼いて粉にして汁にまぜたものに蕪を入れた汁で、冬は毎日のようにそれだった」とおっしゃった。それは蕪コーセンですよ、まさに。その後再取材が出来ていないのだが、「こうせん」が『聞き書島根の食事』の中にあった。斐川の食の中である。
「こうせん」で辞書をひけば、これ、ふつうにある。 日本国語大辞典には、こうある。

1)麦や米をいって挽いて粉にしたこがしに、紫蘇(しそ)や蜜柑(みかん)の皮などの粉末を加えた香味を賞する香煎湯の原料をいう。こがし。

そうこうしてウェブをみていると、このようなページに遭遇。 香り高き香煎・郷愁のスローフード http://20century.blog2.fc2.com/blog-entry-783.html

現在も玄米香煎を製造しているのが、和菓子原料を製造する畠山製粉所。数十年前に需要が途絶えたため製造を中止するつもりだったが、県内に長年これを主食としているという人物がいて、それならば止めるわけにはいかないと、細々と造りつづけて現在に到ったとのこと。

秋田県であるが、「県内に長年これを主食としているという人物」に会ってみたい。

都賀村の地カブについて

『聞き書島根の食事』の中で、くまご飯、くまご、が出ているのは、都賀村のみであった。『聞き書広島の食事』にもない。その都賀村には「地カブ」の話がある。年とりカブと呼ばれていたかはわからない。

いくつかの抜粋を以下に。

p174(野菜〜利用のしくみ)

菜園畑(さえんばたけ;奥出雲ではさえもんばた)は、家のまわりにわずかしかない。山すその草原を焼いて焼畑もつくり、そこには地カブの種をばら播きにする。

春は、秋にとり残した地かぶが焼畑からとれ、菜園畑には、ひらぐきの茎立ちがまず元気に姿をみせる。ひらぐきは、冬の間青いものが不足した生活に活気を与えてくれる。人々は「青いものを食うと、いっぺんにまめになる(元気が出る)」と喜ぶ。つづいて、かきば(高菜)、ちちゃ(ちしゃ)が暖かな春の日差しをあびて見る間に伸びてくる。青菜の茎立ちの味噌あえ、ごまあえはたまらなくおいしい。

p181(漬物〜地かぶの切り漬)

菜園畑が少ないので、山すその草原を焼いて地かぶをつくる。地かぶの根は大きくならないので葉のみを利用する。葉を細かくきざんで、そうけいっぱい用意し、二合塩で漬ける。かぶと塩を交互に重ねるとき、とうがらしのきざんだものもふりかけ、二斗樽で二本漬けこむ。

家を離れて他地へ行った者が、村に帰ってきて一番おいしいと好んで食べのが、この切り漬である。

熊子(クマゴ)のこと〜その1

「熊子(くまご)」とは何かで、いろいろ調べておりましたが、あぁ意外な見落とし忘れ。

かつて調べてメモしておりました。

「竹の焼畑メモ」http://on.fb.me/1ZWpXlD

白石昭臣『竹の民俗誌』p26に飯南町の志津見の話として、竹の焼畑の作物として以下の記述あり。

「焼いたあとまだ灰の冷めやらぬうちにソバやカブを播く。2年目にクマゴ(アワ)、三年目にナタネなどを作る。そのあと放置し牛を放牧する。クマゴは1反(約10r)あたり6俵(約430リットル)の収穫をみたという。」

改めて『竹の民族誌』を読み返してみたものの、クマゴという名称が出てくるのはこの箇所のみでした。

そして、もうひとつが『聞き書島根の食事』(農文協)。

くまご飯が口絵に登場しております。

kumagomesi

邑智郡都賀村での聞き書きであって、基本食の成り立ちの項の中で、日常のごはんを3つあげています。「麦飯」「くまご飯」「茶がゆ」。

都賀村は広島県境に近い江の川両岸にせまる急傾斜地にある。水田、畑ともに少なく、米を食いのばすのに、麦、くまご(あわ)、豆、いも、山菜や野草を年間米にまぜて食べているとある。

以下、いくつかを抜粋引用してみる。

p169〜(雑穀の項)

米には税がかかるが、雑穀にはかからないので助かる。

山すその畑とか焼き畑につくり、自給自足でできただけを食べている。くまご、きび、そばなどを植える。なかでも一番利用するのが「くまご」と呼んでいるうるちあわで、くまご飯にして食べる。きびは、おもにきびもちにし、そばは粉にひいてつもごりそば(年越しそば)などにする。

(くまご飯)

くまごは秋に収穫し、麦を食べ終えるころから春まで食べる。

くまご七にただ米三を入れて炊く。くまごの割合が多いので、子どもが食べた膳のまわりは、ほうきで掃き寄せなければならにほどぽろぽろごはんがこぼれている。