野生のアズキは古い川のほとりに

「秋、野生のあずきを探しに、6000年前の記憶を探しに」と、書いてから5年が経ち、いま2箇所ほどのスポットで毎年みている。最初の2年ほどはどこを探しても見当たらず、途方に暮れたと思うのだが、当時どこを探したかも忘れてしまった。あきらめ半分で、人にそれとなく尋ねるようにもなった。そういうものがあるんですよ、というくらいに。それから半年か1年たつかの頃に、いまみている2箇所を、教えてもらった。「ありましたよ。たぶんそうなんじゃないか」と。

見つける(かる)時期は9月。つる性であるし、他の植生とまじりわかりにくいが、この時期に黄色い花が目立つので、見つけやすいのだ。

さて、野生のアズキとはヤブツルアズキ(Vigna angularis var. nipponensis)のこと。ひとつのポイントでは、毎年安定して開花結実している(もうひとつのポイントでは翌年は消えたりもするが、いまのところ見つけられている)。河川ぞいに点々とひろがってもいて、じっくりと探していたわけでもなかったが、なんと数日前にツルマメ(Glycine soja)も発見した。ふたつがからみあっているので、わかりにくいでしょうが、ヤブツルアズキは褐色の蔓、実は熟して鞘は黒くなっている。ツルマメはグリーンの蔓、実は枝豆のちっちゃいやつがついている。ほんとに大豆そっくりだ。あちこちにはびこっている葛と似ていなくはないが鞘も葉も異なる。

はじめて見つけたのが10月5日で、10日後の10月15日に様子をみにいってみたが、採種にはまだ早かった。もっとも密生しているところは見事に刈られ、すみにかためられていた。水路の堰のそばであったからだろうが、なぜここにと考えたときに、あぁやはり上流から流れてきたものかもしれないと。

来歴についてはおぼろげに気にしている程度であったが、今日が吉日として、たどってみることにした。そして、あった。ポイントほどの群生ではないが、生きている。小さな群れで。ツルマメもいっしょだ。採種ポイントからは1kmほど河川をさかのぼったところ。かつては後谷川と呼ばれていた川のほとりだ。後谷……民俗学では、後谷、イヤ谷、寺田、これらは葬送地を意味するものとして認知されている。下の写真である。この小さな川と谷は明治19年に大規模土木工事によって改変された場所でもある。

ツルマメはウェブサイト「松江の花図鑑」にもある。2012年10月13日、玉湯でまだ青い果実だ。このポイントと標高は20m程度しか変わらないと思う。開花、結実とも栽培大豆とほぼ同じなのだろう。

ツルマメと似た野生種にヤブマメがあるが、「三河の植物観察」をみると両者を比較した違いを写真とテキストでわかりやすく示している。ツルマメは「小葉が細く、花の長さが短く、小型。果実は全体に毛があり、種子の表面もざらつく」と。ヤブマメは「小葉の幅が広く、花の長さが長く、やや日陰を好む」と。

10日から14日後を目安にまた来てみることとしよう。