さくらおろち湖のサンクチュアリ

 人の波に洗われる桜並木もあれば、人が足を踏み入れることのない場所にあって、春の風に、薫る大地に祝福されるかのように、淡い花を咲かせる桜もある。

 しかし、この場所は人の手が入りかねていて、植樹された楓が葛に埋もれてしまっている。からまった葛のかたまりをみると、何かを思い出す。そう宮崎駿風の谷のナウシカ」(書籍のほうね)で描かれるところの「闇」のイメージ。いやなもの、きたないもの、からみあったもの、要すれば人が嫌悪感をもつもの、である。

 「闇」との対話については、宿題とするとして、ここで、その手前にあるもの、腐海や蟲といった「攻撃してくるもの、おそってくるもの」への理解である。

 「怯えていただけなんだよね。こわかっただけなんだよね」

 とナウシカはいう。

 攻撃してくるものは、怯えているものである。

 怒っているものは、傷ついているものである。

 そして、人は傷つき怯えているものを理解し、共感することができる。

 ”自然はさびしい。しかし人の手が加わるとあたたかくなる。 そのあたたかなものを求めてあるいてみよう”

 そう言って、日本の村を歩いた宮本常一なら、この山野をみて、どう思うだろうか。

 理屈はともかく、まず、目の前に落ちているゴミを拾うことから始めるべきだとは思っているし、これまでそうしてきたのですが、いま少し立ち止まって考え続けてみたいと思います。

桃源郷のような

 桃源郷の春。かと思うような地でありました。

 舗装道とはいえ急峻な山道を駆け上がったところに開けた4〜5軒ほどの小さな集落です。

 ここなら、挑戦してみたい、人生をかけてみたいと、思えるのではないでしょうか。私も30代前半であれば、ひとめぼれしたかも、です。

 実際、ここの土はよかったです。

 何がよかったのか。

 実は在来カブの再生栽培調査に同行させていただいたのですが、どれも特徴をよく発現していました。他の土地でははぶいたり、よせたりして、発現優位のもの同士での交配をしかけたのですが、ここでは、「じゃあこのへんで」ということで根付いたままの状態のある箇所を選んでネット(交雑防止)をかぶせました。

 マイクロクライメイト(超微小気候)を生かした栽培が、この地での新たな営みをつくれるかもしれません。

奥出雲竹取り通信1号まもなく発刊

 やっとこさ入稿をおえて、来週末にはあがってきます。

 

 巻末の「本棚」(参考文献)を抜き書きしておきます。

 ※のちほど、リンクを設定しなおしましょう。

 

本棚(主要参考文献)

どれでも興味のあるものから読まれるのが一番かと思うがあえての選書をしてみた。竹林を保有はしていないが、市民として興味があるのであれば、5)をおすすめしたい。島根県出身の著者が京都でNPOをたちあげての奮闘記である。所有者であれば、香川県環境森林部がつくった19)がよくまとまっている。竹の生態についてなら入門として2)は欠かせないのでは思う。一方で「竹林問題」を整理して考えるときに、12)を読んでおくと理解が進みやすい。

竹林の問題は里山の問題でもあり森の問題でもある。産業的視点と生態学的視点のバランスをうまくとっている森林ジャーナリスト田中淳夫氏の著作からは7)を。また、8)は生態学の最新の知見も盛り込み、森と里山についてのイメージを新たにしてくれる。

1)沖浦 和光(1991)竹の民族誌?日本文化の深層を探る,岩波書店

2)上田弘一郎(1979)竹と日本人,日本放送出版協会

3)野中重之(2010)タケノコ?栽培・加工から竹材活用まで,農山漁村文化協会

4)橋本清文,高木 康之(2009)竹肥料農法?バイケミ農業の実際,農山漁村文化協会

5)杉谷保憲(2010)京たけのこが教えてくれた,京都新聞出版センター.

6)岸本定吉,池嶋庸元(1999)竹炭・竹酢液のつくり方と使い方,農山漁村文化協会

7)田中淳夫(2007)森林からのニッポン再生,平凡社

8)清和研二(2013)多種共存の森,築地書館

9)徳川林政史研究所(2012)森林の江戸学,東京堂出版

10)内村悦三,中川重年,近藤博,松田直子,大石誠一,中西良孝,谷嘉丈,渋沢龍也,狩野香苗,濱田甫,杉谷保憲ほか(2009)現代に生かす竹資源,創森社

11)農山漁村文化協会(2012)竹徹底活用術?荒れた竹林を宝に変える!,農山漁村文化協会

12)山田辰美(2004)放任竹林の拡大から里山を守る,「農村自然環境の保全・復元」p.154-163

13)大野朋子,下村泰彦,前中久行,増田昇(2004)竹林の動態変化とその拡大予測に関する研究,「ランドスケープ研究」67(5)p.567-572

14)鈴木重雄(2008)竹林の拡大特性とそれに基づく持続可能な管理手法の開発,広島大学大学院国際協力研究科博士論文

15)鈴木重雄(2010)竹林は植物の多様性が低いのか?,「森林科学」58, p.11-14

16)柴田昌三(2004)竹は里山の邪魔者だって!?ー里山管理を放棄した人間のエゴ,「森と里と海のつながり」p.86-91

17)柴田昌三(2010)竹資源の新たな有効利用のための竹林施業,「森林科学」58, p.2-5

18)鳥居厚志,奥田史郎(2010)タケは里山の厄介者か?,「森林科学」58, p.2-5

19)香川県環境森林部(2005)竹林の整備と利用の手引き

20)千葉県森林研究センター(2008)里山活動によるちばの森づくりー竹林の拡大防止と竹材利用

以上。。。。

久多見神社のこと

 尾原ダムから松江へ向かう際には、忌部をいつも通るのですが、いかなる地なのかが気になっていました。松江の郊外にあたり、上水道の水源地でもあり、また一方で拡大した竹林や耕作放棄地が幹線道から垣間見えていてのこと。

 そんな折、久多見神社のことを知りました。玄小子のHPによれば、「式内社調査報告」に次の記述があるのです。

「明治四十四年悲劇の合祀後、大正十二年平口部落民十五世帯は、山林を拓き、残っていた社殿を地引し、奉斎した」

 悲劇の合祀です。

 あぁ、いったい何があったのでしょう。明治44年から大正12年の間、15世帯という小さな集落が共有した物語を知りたくて、県立図書館で忌部村史(復刻)を閲覧しましたが、斯様な記載はありません。雪のふるある日にそばまで行ってみました。

 春が来たら、参詣して、昔日を問うてみたいです。

 文献については、U氏に一度きいてみましょうかな。

 あわせて、概論としてこちらを閲読すべきかな。

「神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈」安西水丸著 岩波新書 1971年

水神

朝の散歩の途中で見つけた水神さま。裏山から引いてきた水を貯めている場所に祀られています。おそらくはここのお宅のものであろう。家や小さな集落の単位でしか、こういうものは残っていかないだろうし、小さな営みのなかで確かに継いでいかれるものが希望なのだ。そう思うと、このコンクリートの塊がとても大事なものに見えてくる。構造体としては何年もつのだろうか。これから長くて40年だろうか。
50年後にこの場所を確かめることは、私にはできない(可能性がなくはないが)だろうが、行く末を信じられるくらいには、この世の中を生きて進んでいきたいものだ。

里山修復体験場?

1976年10月22日撮影の航空写真です。島根県の尾原ダム・さくらおろち湖の自転車競技施設上空。

ダム建設に伴う居住移転の後、この谷戸には建設残土が入れられ、芝生の広場ができました。

一段高くなった広場の横は、みるみる湿地と化し、いかんともしがたい状況に。

水路をきって、排水をよくしたところで、さといも、こんにゃく、くらいはつくれるのかなと思ってみたりしますが、基本的には「自然に戻す」場所。問題はそこに人の手がどのようにどのくらいかかわるべきなのかということ。

そして、なにより、ここは「人が集う」場所として創り出していくところなのだなあ。

ほかの練習問題をとくことから、と、とりあえずは位置づけました。

研修・体験レベルの者であれば、竹を刈るくらいは問題なしといわれていますし、「GI」、ビオトープへの布石としてよいのかなあ。しかし、これは難易度高そうです。

この周辺には民家が皆無なのですが、そのデメリットをメリットに変えるような何かが必要です。まったく新しいタイプの里山修復体験(実験)場??

竹チップ&パウダー覚え書き

 竹取り研修が終わって5日めだというのに、なかなか「まとめ」に着手できません。忘れないうちメモ風に備忘を。

 チップ・パウダー化は、おそらく時間にして約1時間半。最初は葉を落としていましたが、早々に「丸ごとぶちこみ」に変えました。

 枯れた竹はいれないことにしましたので、古竹は燃やすことに!(予定外:燃やしたいけど、この日にはできんでしょうと事前に講師(マスター)とは打ち合わせていたのですが、山主が「やろう」と言ったので)

 チップは袋づめ、6袋ぶんかな。後ほど写真で確認しましょう。

 袋につめるのであれば、やるそばからつめたほうがよいです。後で「山」からつめるのでは手間がかかります。

 チップ化ふくめての整備作業の人足勘定について、です。勘にもとづいて言います。

 2人いればやりやすいですが、3人〜4人が効率よく作業を進めるうえでの最低人数かもしれません。

 チップの組成はあとで書物で確認しますが、窒素が少ないことと、珪酸が多いこと、が特徴かな。乳酸菌を含有していますが、島根県中山間地研究センターからお越しいただいた指導員?によれば、土壌の菌と協働して土がよくなったという実例はないそうです。嫌気発酵させての効果は「実証はされてない」ということでした。

 ということで、使い方としては、主に3つ。

①竹林にそのまま敷く・まく……手間がかからないです、これ重要。土壌がふかふかとして(踏み固められなくて)タケノコがよくできるよう。しかし、おいしいタケノコめざしてイノシシが殺到するという事例が多数あるらしい。

②果樹の土壌に敷き詰める、しかも厚く(15センチくらい)……これ、再度確認です。

③落ち葉と同じく堆肥化する……山積みにして切り返し作業。

 あぁ、それからですね。竹灰の使い方として、田んぼにいれるのが常道として古くから行われてきたのです。これがいちばんかもね。

 また、今回は灰になるまで燃やしましたが、途中で消せば、ポーラス竹炭のできあがり。

 焼き物の釉薬として、こんにゃくづくりの材として、これは特産開発のひとつとして一考の価値ありですね。

 そして、竹を燃やすに際しては、杉のそばでやったんですが、おじちゃんたちは、とーっても慣れているというか、わきまえているというか。

 「そろそろ葉も乾いてきたけん、ちょっとあっちにずらさんと」

 「ちょっと雪かけて、勢いけさんと」

 うまく、火をコントロールしてました。

 「雪」がまわりに転がっているというのも大きいなあ。手でもってかければいいんですから。

 いやあ、来週中には「奥出雲竹取り通信」を発行せねば!です。

2月16日 奥出雲竹取りの会〜研修会_レジュメ

 まずは当日配布したレジュメをのっけておきます。

【竹林の整え方】

1)安全に楽しく

  ・山の中ではゆっくり動く。

  ・竹林、竹やぶはすべりやすい。

  ・切り稈(株)のささくれ、切断面でのケガ

  ・虫、獣

2)まずは「観察」から

  ・竹の年齢をみる…1年生:タケノコの皮が残っている

           2〜3年生:稈が青々しい、節も白い

           4〜5年生:稈が赤みがかる、節がやや黒い

           6〜8年生:節が黒い、稈が汚れた感じ

  ・ひろがりかたを地上部(稈)と地下部(地下茎)で想像してみる

  ・どこを作業場にするか(竹を置く場所、チップにする場所、焼く場所)

  ・明るさ:太陽光がどの程度地面(林床)に届いているか

  ・稈の太さ、葉の茂り方

   ★拡大侵入防止の基本…①タケノコ蹴飛ばし

               タケノコの出る期間は約2ヶ月。この間に見回り、

               全部!取る→5年程度?でタケノコが出なくなる

              ②溝きり…重機で掘れれば。1メートル深さは必要。

              ③埋設資材…波板など

              ④伐採繰り返し…伐採後、笹状の再生竹が出てくるが、

                      逐一刈るより、冬に初回皆伐、夏に再

                      皆伐がよいらしい。

              ※他の植生帯とは1メートル以上の緩衝地帯を設ける。

              ⑤道をつくる?水路をつくる?……

               踏み固めた道を地下茎は横切れない。水路も同様?

3)季節ごとのイロハ

  ①冬……12月〜2月 ▼稈部(地上部)

            材を利用するのにはよい=水分が少なく腐りにくい。

            →裏をかえせば切り稈も腐りにくい(残ってしまう)。

            1メートル程度の高さで切れば春に水を吸い上げて腐る

            竹炭等にするのにも適期。

            チップにするのにもよい?

            ▼地下茎

            タケノコの芽。

  ②春……3月〜6月 ▼稈部(地上部)

             4月が最も水・養分を吸い上げる=切った後も腐りやすい

            ▼地下茎

             タケノコから若竹(1年生)になるため栄養を消費。

             竹の秋(5〜6月)=落葉の後、葉を茂らせて光合成活発化、

             地下茎に栄養が蓄えられる。

            

  ③夏……7月〜8月 地下茎を弱らせるにはこの時期に稈を刈るというのもあり。

 

  ③秋……9月〜11月 竹は9月に切るのがよい?

            

4)刈り方

  ≪道具と機械≫

  ・チェーンソー……太いものの場合と、玉切りに。

           受け口、追い口で倒すのは普通の木と同じ。

           跳ね返りに気をつける。

  ・刈り払い機……細いものなら。

  ・のこぎり……効率がよいのは、仮枠用(コンパネ切断用)。

  ・ナタ……なくてもよい。枝払い用。

  ・チッパー(樹木粉砕機)

  ①足場の整理……枯れて倒れた竹の整理

  ②作業場、作業道の確保……一部の竹を伐倒

  ③斜面であれば、基本下から上へ帯をつくる(帯状皆伐

  ★1本1本について、どの位置で切りどの方向へ倒すか

【竹チップ余談】

イネ科だけあって、肥料として使うのに稲藁や茅と性質が似たところがある。

1)袋づめにして嫌気発酵……なるべく空気を抜く。

                袋につめて約1ヶ月。浅くすきこんで施用。

2)野積み堆肥とカブトムシ……野積みにすれば発熱堆肥化する。

               熱が下がったあとにカブトムシの幼虫が

3)マルチとして表面施用……土着菌、微生物に食わせる。

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ロケットコンロ(ストーブ)のそれから

 できたー! と夜の0時過ぎに妻を叩き起こして喜んだ次の日。

 燃焼具合を試してみました。

 いいですね。

 本日、日曜日に奥出雲竹取りの会研修会でのお披露目となりました。

 皆さん、聞いたことはあっても実物を見るのははじめてという方ばかりでした。ぽんと広場に置くやいなや、わらわらと人が集まってくる状態で、大変興味をもってもらえましので、当初の目的は達成。お次は「山」と「薪」の確保です。こやつの場合、針葉樹の枝だろうが、竹割ったのだろうが、使えます。竹の生木でも使える=すなわち燃えることはわかりましたが、やはり煙・煤は多く出ます。これ、もっと燃焼効率を高めたものであればどうか。そういう気にもなりますが、竹材の確保が先でしょうねえ。いまの時期(12〜2月)のものであれば、3ヶ月くらいで含水率20%までもっていけるだろうと。

 そこで、まだお試し段階として「個人」として動くのか、NPO団体として動くのか、はたまたまた別の団体もまじえて動くのか、ですが、うーん、もうちっと考えます。

ロケットストーブ釜をつくる…その1

 奥出雲竹取りの会・研修会向けにロケットストーブ釜をつくっています。

 複数の動機に基づいているので、箇条書きにしてみますわ。

①ずっとつくってみたかった……およそ3年前からの関心です。セルフビルド住宅やパーマカルチャー関連の情報で存在を知り、こらいいなと。

②薪ストーブは高価。竹でも杉の枝打ちしたものでもうまく燃やせる釜がほしい。

③プロパンガスが高い。

④奥出雲竹取りの会で竹を燃やす。火へのアプローチ一歩目としてまずは煮炊きできるという釜をやろうではないか。竹を燃材として使うに際し、ロケットストーブの特徴をうまくいかせるのでは?

 という具合です。

 さまざまなウェブサイトを参考にしました。

 つくってみてはじめてわかることも多数。

 今日は夜なべしてここまで。

 明日には完成させます。